山崎法律事務所ブログ

2013年11月16日 土曜日

事業承継(第3章 「中小企業における経営の円滑化に関する法律」による解決

相続における事業承継の話を3回にわたって行いましたが,今回は,このお話の最終章です。
前章でお話ししましたように,遺言書を利用した事業承継では,相続開始後に遺留分によるトラブルを回避することはとても難しいといえます。
そこで,このような困難性を回避するために,「中小企業における経営の円滑化に関する法律」において,民法の特例が定められています。
すなわち,この法律では,遺留分の例外として除外合意と固定合意を定めています。
 除外合意というのは,株式を遺留分算定基礎から除外するという合意をいいます。除外合意をすれば,株式について他の相続人は遺留分を主張することができなくなるので,相続に伴って株式が分散することを防止できます。
また,固定合意というのは株式を合意の時点の価額で固定するという合意をいいます。固定合意をすれば,合意したときの株式の価値が500万円であったのが,相続開始時には株式の価値が3,000万円に上がっていたとしても,このような株式の価値の上昇が遺留分の金額に影響をしないことから,後継者は,相続時に想定外の遺留分の主張を受けることがありません。
これらの合意は,推定相続人全員で行う必要があり,合意が成立すると1ヶ月以内に経済産業大臣の確認を得るために,熊本県のような九州管内の企業であれば,九州経産局に申請し,大臣の確認を得られると1ヶ月以内に,事業所の所在地を管轄する家庭裁判所に審判申立をして,家庭裁判所の許可を得ることで,効力を発生します。
ただ,後継者が既に過半数の株式を有する株主であるときには,この制度は適用されません。
このように,後継者がすでに過半数の株式を有する株主であるときには,会社の支配権を有しているといえますので,先代の死亡による混乱が生じる危険がほとんどないからです。
このときの注意として,後継者が過半数の株式を有した経緯が,売買に代表される有償取得である必要があります。
なぜなら,贈与に代表される無償取得であれば,遺留分の計算に含まれてしまい,遺留分のトラブルによる会社支配の混乱を回避できないからです。
事業承継では,税制面に興味関心が集中しがちですが,法律面と税制面が車の両輪のようにかみ合ってこそ円滑な承継が可能となります。
法律面にも興味関心を持っていただければ幸いです。

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2013年11月10日 日曜日

事業承継(第2章 民法の原則に従ったときの不都合性 第2款 遺留分問題回避の困難性)

1.遺言書の記載により遺留分問題を回避することの困難性

遺言書作成のときに,後継者以外の相続人の遺留分を確保した内容の遺言書を作成すれば,理論上は遺留分による争いは起きにくいように思えます。
しかし,問題はそのように簡単ではありません。
例えば,遺言書作成のとき,予想される相続財産が3,000万円,うち株式の価値が1,500万円とします。
 すると,遺留分の計算は,前回お話しした計算と同じですので,妻750万円+子ども150万円×4=1,350万円となります。
 これであれば,後継者に株式の全てを承継させたとしても,後継者でない相続人の遺留分を侵害していません。
現実には,本宅などについても後継者に相続させたいと思うことでしょう。
そのような相続をさえるときでも,株式の過半数を後継者に承継さえれば,会社の支配権を後継者に取得させることができます。
従って,株式のうち過半数を後継者に相続させる内容の遺言書を作成すれば良いことになります。
 しかし,御社の業績が向上して,株式の価値が上がったとします。
 ところで,先ほどの例で,1,500万円であった株式の価値が3,000万円になったとします。
すると,相続財産は株式以外の相続財産に増減がないとすれば,4,500万円になります。
 ちなみに,株式の価値は,証券取引所に上場していないときには,会社の資産を基準にしますので,御社の業績が向上して,会社の資産が増えれば,株式の価値も増加することになります。
 すると,この株式の価値が3,000万円になったところで,遺産分割が行われたとしますと,1と同じ家族構成(妻+子ども5人)であれば,その遺留分は,妻の遺留分が,4,500万円×1/2×1/2=1,125万円,子ども1人あたりの遺留分が,4,500万円×1/5×1/2=450万円となり,遺留分合計は2,295万円になります。
株式についてこの遺留分を主張されれば,後継者は会社の支配権を取得することが困難になります。
 
2  遺留分放棄制度の限界

 民法1,043条では,遺留分放棄の手続を定めています。
 しかし,この手続は,遺留分を放棄しようとする者が,それぞれご自身で家庭裁判所に申立をして許可を得る必要があります。
 さらに,遺留分の放棄は,全ての相続財産について遺留分を放棄する,または遺留分の一部を放棄する場合であっても特定の財産について,その全てを放棄しなければならず,柔軟性に欠ける点があります。

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